HOME >痛み学、炎症学 >慢性疼痛の原因は3分類|侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,心因性疼痛
監修:冨澤敏夫(柔道整復師)

慢性疼痛の原因は侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,心因性疼痛

慢性疼痛(痛み)は原因で分類すると3つに分けることが出来ます。痛みをすべて理解することは難しいですが、知識があることで必要以上に心配しないで済みます。また、危険な痛みも早期ケアできることで大事に至らずに済みます。

原因による分類では、侵害受容器を介する侵害受容器性疼痛と、侵害受容器を介さない神経障害性疼痛・心因性疼痛(中枢神経障害性疼痛)の3つがあります。

これらの3つに分類された慢性疼痛(侵害受容器性疼痛・神経障害性疼痛・心因性疼痛)は時間が経過することで融合して分類が難しい難治性疼痛に変化していきます。

慢性痛の原因は、慢性痛自体が原因となる

急性痛の原因は、怪我などで負傷したという原因があります。しかし、慢性痛の原因となると怪我などの組織の損傷が無くても痛みがあるので、慢性痛の原因は慢性痛自体が原因として見られています。

こちらから、「慢性痛とは」を御確認下さい。

参考:慢性疼痛のガイドライン(PDF)

 

目次

  1. 侵害受容器性疼痛とは
  2. 神経障害性疼痛とは
  3. 中枢神経障害性疼痛とは

 

 

侵害受容器性疼痛とは

怪我などの際に起こる痛み

侵害受容器性疼痛には、病的でない痛み、単なるつねる、熱などや、切り傷や打撲などの炎症で起こる痛みがあります。

侵害受容器とは、痛み刺激(侵害刺激)を受容する場所であり、1次侵害受容ニューロンの末梢終末の髄鞘が焼失した自由終末部です。末梢から脊髄に痛みを伝える求心性です。

受傷時に感じる鋭い痛みと、その後に続くジンジンした鈍い痛みの2種類あります。鋭い痛みは「一次痛」、鈍い痛みを「二次痛」と呼びます。

両方とも受容器は自由神経終末(侵害受容器)ですが、一次痛は強い機械的刺激のみに応じる機械的侵害受容器(高閾値機械受容器)で受容されます。

二次痛は、すべての侵害刺激(機械的、化学的、熱的)に応じるポリモーダル侵害受容器で受容されます。

痛みの原因がないのに痛い理由に

急性痛では炎症などで、侵害受容器が興奮して電気信号を神経線維に伝え、脊髄や脳に伝え痛みを感じます。慢性痛では、痛みの原因がないのに痛い理由には、色々ありますがシナプスの問題も考えられます。通常痛みは侵害受容器が興奮することで電気信号を作り出して、それを神経線維が脊髄に伝え、脊髄でシナプスを介して脊髄や脳に情報を伝えます。このシナプスが侵害受容器と神経の興奮が無くても、伝わってしまうことが起こります。このようなシナプスの長期増強現象を神経の可逆的変化と言います。

 

神経障害性疼痛とは

神経に問題が起こり痛み痺れを感じる

侵害受容器性疼痛はけがなどで起こる正常な身体の反応に対して、神経障害性疼痛は炎症で起こる痛みではなく神経の障害で「勝手に興奮して起こる痛み」です。

この痛みは、神経圧迫や病気の基礎疾患が原因とされています。また神経症状の合併症として不安やうつ・不眠・イライラも起こりやすくなり、心因性とも複雑に絡み合い精神状態から痛みの増悪も引き起こします。

神経障害性疼痛で悩んでいる方はどれくらい?

ある臨床研究では、神経障害性疼痛を持っている方は5000人中に10.6%いると解りました。10人1人とされていますが、意外に多い症状だと思います。

女性の方は60歳以上の方に多いとされています。また、神経障害性疼痛は「痛みの強さ」「持続時間」が他の慢性疼痛(侵害受容器性・心因性)よりも強いと言われています。

長期に痛みを感じていると精神的な苦痛も感じてしまうので、早急に改善させた方が良いと思います。

神経障害性疼痛の原因とは?

先程、神経が「勝手に興奮して痛みを感じる」のが神経障害性疼痛と言いましたが、原因は色々です。主に病気が基礎疾患の原因としてあげられています。

      糖尿病では、神経への血流が低下し神経細胞が傷つきます。
      アルコールの大量摂取は、神経にダメージを与えます。
      ビタミンB不足は、神経の機能に異常が起こります。
      甲状腺機能低下は、ホルモンが減少するため神経に栄養が生きにくい。
      帯状疱疹ウイルス・HIVウイルス・梅毒の感染症など
      ギランバレー症候群・シェーグレン症候群など自己免疫疾患など

他にも、神経が障害された部位(領域)だけに神経障害性疼痛が出ることがあります。

    坐骨神経痛では、お尻・腰で神経が直接圧迫される。
    頚椎症性神経根症は、首(頸椎)の神経の出口が圧迫される。
    外傷(怪我)では、神経が傷つくことで痛みが発生する場合など。
    腫瘍があると神経を圧迫したり、神経に腫瘍ができる場合など。

神経は目に見えない部分であるため、MRIなどの画像検査が必要になり、病院と連携して治療を進めて行く方が良いと思います。

帯状疱疹や糖尿病性神経障害、坐骨神経痛など神経の障害で起こる痛みです。神経の問題のため激しい痛みで我慢しがたい痛みで困ります。

神経自体に何らかの圧迫が長期的に加わり、神経細胞を痛めた場合も含みます。

切り傷は治ったとわかりますが、神経の障害は目で見えるわけではないため判断は難しいです。

神経障害性疼痛の症状は?

神経障害性疼痛スクリーニング質問票は日本で開発されたもので、7つの質問に対して5段階評価で回答を得る方法です。(全くない:0点~非常に強くある:4点)

    針で支えるような痛みがありますか?
    電気が走るような痛みがありますか?
    焼けるようなヒリヒリする痛みがありますか?
    しびれの強い痛みがありますか?
    衣類が擦れたり、冷風に当たったりするだけで痛みが走りますか?
    痛みの部位の感覚が低下していたり、過敏になっていたりしますか?
    痛みの部位の皮膚がむくんだり、赤や赤紫に変色したりしますか?

9点/28点以上で神経障害性疼痛の可能性が高くなります。

詳細は、神経障害疼痛の概念(PDF)を参考にしてください。

他には以下も神経障害性疼痛の症状の特徴になります。

    何もしていないのに痛くなる
    突然痛くなったりうずいたりする
    痛みを感じる部位を動かしにくいこともある

神経障害性疼痛の合併症としては、不安やうつ・不眠・イライラが出てしまうこともあります。

アロディニアという本来なら痛く感じない刺激で、軽く押したり触れたりするだけでも、激しい痛みを感じる異常な神経興奮が起こるものもある。

手術などで神経を損傷後に修復される過程で神経に痛みを起こすこともあるそうです。

帯状疱疹もひどくなると後遺症の神経痛が残る。

坐骨神経痛は神経障害性疼痛です。坐骨神経という太い神経が、圧迫・絞扼されることで神経痛が発症します。帯状疱疹も神経障害性疼痛で、神経に沿ってウイルス性の障害が起こります。気づかずに放置して悪化すると後遺症として、神経痛が残る場合もあるので早期ケアが大切です。

こちらから、「坐骨神経痛とは」を御確認下さい。

神経障害性疼痛に対する薬

神経障害性疼痛に対する薬

神経障害性疼痛に使われる薬は色々あるようです。代表的な薬を調べてみました。

(参考:ひまわり医院を御覧ください)

① プレガバリン(リリカ®)

神経同士の伝達物質であるカルシウムイオンの量を減らすことで、神経の興奮を抑えて鎮痛作用を発揮する薬です。糖尿病の方の末梢神経のしびれにも効果的だそうです。

副反応は、不眠・めまい・頭痛などがみられることがある。

② ミロガバリン(タリージェ®)

プレガバリンと同じく、神経でのカルシウムイオンの流入を抑えることで、鎮痛作用を発揮する薬です。糖尿病の末梢のしびれにも効果があります。

副反応は、プレガバリンと同じ。

③ 三環系抗うつ薬(トリプタノール®など)

脳の神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリン)が、神経に再度回収されるのを防ぐ薬です。

閉塞隅角緑内障の方・心筋梗塞回復初期の方・前立腺肥大のある方は投与できないのと、他の薬と併用に注意が必要で、循環器系や精神神経系に副作用がでる可能性があるようです。

④ セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(サインバルタ®など)

三環系抗うつ薬と同じく、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬です。

糖尿病性による神経障害から、腰痛症(神経根症)などにも効果的です。

副反応に吐き気や眠気などがあり、高度の肝・腎機能障害の方やコントロール不良の閉塞隅角緑内障の方は使用不可です。

⑤ ノイロトロピン®

帯状疱疹後の神経痛に対して日本で臨床試験が行われ、鎮痛効果が示されている薬です。(詳細はこちら)

臨床使用の歴史が長く、安全性が確認されていています。副反応に、発疹・肝機能障害などがあるようです。

⑥ オピオイド鎮痛薬(トラマール®)

がんの痛みを抑える薬で、神経障害性疼痛としても第2選択薬として用いられているようです。精神依存は少ないですが、長期使用には注意が必要とされています。

副反応に吐き気や便秘・嘔吐があるので、短期的に使用してみて効果を確かめながら使用します。

神経障害性疼痛(神経の痛み)の他の治療法は?

神経ブロック

痛みで傷ついた神経の周辺に麻酔薬を注射することで、痛みをなくす方法です。

理学療法・作業療法

痛みに応じたストレッチやマッサージ・運動療法を行うことで、痛みの軽減や、痛みに対する恐怖を改善させる効果があります。

手術療法

保存療法の治療で改善せず、手術の適応となる症状については、手術療法が適応されます。

 

中枢神経障害性疼痛(心因性)とは

中枢神経障害性疼痛は、心因性疼痛とも言われている。

中枢神経障害性疼痛は心因性疼痛とも呼ばれています。昔は原因不明な痛みと言われ、心の病と言われていましたが、最近は脳科学が発展して、脳の機能の異常が痛みの原因とされてきています。

鬱や統合失調症なども脳の機能異常と言われ始めているそうです。

心因性腰痛で心療内科を紹介されるケースが増えている。

長く腰痛で苦しむ方、原因がわからずストレスと言われたなど、原因不明の腰痛で悩む方は増えています。整形外科などで改善しないため、先生がお手上げで心療内科を紹介されて、薬を服用するケースが多いと言われています。確かに、気分の良い時は腰痛を感じないという方もいます。逆に気分が落ちているときは、腰痛を強く感じると言います。腰痛は8割が原因不明と言われているだけに、原因にとらわれず、どんな原因にも共通する部分を、改善させる技術が必要です。

こちらから、「心因性腰痛とは」を御確認下さい。

 

関連記事

 

目次

  1. 痛みとは
  2. 痛みの分類(原因)、侵害受容器性,神経障害性,中枢性(心因)障害
  3. 痛みの分類(部位)、体性痛と内臓痛
  4. 痛みの分類(時間)、急性痛と慢性痛
  5. 関節の痛みとは、滑液包炎が原因で長期化すると変形性関節炎に
  6. 治る早さは、症状レベルによる影響する!整体師がわかりやすく解説

 

監修:冨澤敏夫(柔道整復師・整体師)

慢性痛の湿布 「10秒かかと上げで足裏の痛みが消える!」(KADOKAW)、ペンギン歩きを治せは「しつこい足の痛みは消える!」(現代書林)のどの書籍があります。雑誌の取材などメディアで紹介されています。

日経ヘルス・健康364、わかさ、PHP出版などから取材を受けて、雑誌の1年間の連載も好評でした。

 

さいたま中央フットケア整体院の紹介

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さいたま市の南与野駅から徒歩8分の整体院

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